あとがき より
私が、なぜ子どもの頃の回想こだわるのか。それは、人の心を回復させてくれる力を持っているからです。誰しも、生きていくうえで平坦な道だけではなかったはずです。良きにしろ悪しきにしろ、それぞれのことに必ず意味があり、プロセスがあります。ひとつのことにも、長い長い道を経て、今の自分があるはずです。誰もが平等に何度でも、そのことを知るチャンスを与えられています。そのことに気づくのは自分自身だけですから。
これは、私がまず、一番始めに書いた文章です。色々な思いを込めて、短い文章にしメインフレーズとして使っていました。人を諭すことを打ち砕かれ、人を諭すことの難しさを知った時期かもしれません。そして、行き着いた先がこの文章になったのです。時を経て、この言葉の意味を書いてみたくなりました。 自分では改善できない、どうしようもない苦境に陥った頃、私は子どもの頃の懐かしい出来事や思い出に、その頃の笑顔を空想し、どうしようもない現実に逃げ場を作り、心を癒していました。何故そんなことをしていたのかは、その時は気づきもしませんでした。自分の過去と重ね合わさねばならなかったのか、何かそこにヒントを見出したかったか、あるいは、ひとつひとつを思い出し、つなぎ合わせる必要があったのかもしれません。 どんな酷い環境に育ったとしても、誰しもひとつぐらいは、そんな楽しいひと時があったのではないでしょうか。そんな楽しいひと時が、心の隅にあるからこそ、そのひと時を再現しようと探し、求め、苦しむのではないかと考えたのです。 そんな、カケラのようなちっぽけな楽しいひと時は、過去の闇によって覆い尽くされ、何も見えなくとも確かにそこにある。だからこそ苦しいのではないかと。もし、そのカケラをひとつでも引っ張りだすことが出来るなら、そのたったひとつのカケラを、大きく膨らませることが出来るなら、大きく膨らんだカケラが、次のカケラを引っ張り出してくれるのではないかと思います。 その小さなカケラのようなプロセスを知る事は、楽しかった事のプロセスを知ることでもあります。本当に楽しかったということは、それを共有する相手がいたということではないでしょうか？ そして、共有した相手の暖かい眼差しがあったからではないでしょうか。そして、それは一瞬であろうとなかろうと、愛を注ぎ、愛を受けた証なのではないかと思います。その一瞬の受けた愛情を確かめられたら、一瞬でも繋がった心を感じられたら、辛い過去を、真っ白になった記憶を、這いずり回らせた理由がわかるかもしれません。
愛情を求めてさまよう人たちは、その一瞬の小さな愛情を心の奥深くに沈め、辛い過去ばかりにとらわれ、その小さな光に目を向ける事すらできないでいます。人は愛されていたのだという確証が少しでもあれば、いや、たったひとつだろうと、愛されていた確証を得る必要があるのです。その偽りのない愛情を感じることが出来れば、これまで長い道のりの中で、たくさんの人たちから受けてきた愛情を再確認できる。失望を絶望に変えられなかった理由が、そこにあるのかもしれません。
人間は酷いことをする、人間は裏切る、人間は嘘をつく、確かにその通りかもしれません。しかし、触れ合った時の暖かさや愛情を感じたからこそ、一瞬でも暖かさや愛情が本物だと感じたからこそ、あきらめず生きていける。不信に身をおき、不信に打ち砕かれ、不信を選択するのも自分自身。何度も不信に打ち砕かれようとも、光を見つめることを選択するのも自分自身。もし、心地よく生きることを本当に望むなら、そこは必ず気づかなければならない分岐点なのではないでしょうか。
人の不遇を比べることなどできるはずもありません。しかし、不遇な環境に育ってきた人にも、回復出来た人がいるはずなのです。私はそう確信しています。私が子どもの頃の回想にこだわるのは、その小さなカケラの輝きに、限りない可能性を感じてしまったからかもしれません。
これは、私がまず、一番始めに書いた文章です。色々な思いを込めて、短い文章にしメインフレーズとして使っていました。人を諭すことを打ち砕かれ、人を諭すことの難しさを知った時期かもしれません。そして、行き着いた先がこの文章になったのです。時を経て、この言葉の意味を書いてみたくなりました。 自分では改善できない、どうしようもない苦境に陥った頃、私は子どもの頃の懐かしい出来事や思い出に、その頃の笑顔を空想し、どうしようもない現実に逃げ場を作り、心を癒していました。何故そんなことをしていたのかは、その時は気づきもしませんでした。自分の過去と重ね合わさねばならなかったのか、何かそこにヒントを見出したかったか、あるいは、ひとつひとつを思い出し、つなぎ合わせる必要があったのかもしれません。 どんな酷い環境に育ったとしても、誰しもひとつぐらいは、そんな楽しいひと時があったのではないでしょうか。そんな楽しいひと時が、心の隅にあるからこそ、そのひと時を再現しようと探し、求め、苦しむのではないかと考えたのです。 そんな、カケラのようなちっぽけな楽しいひと時は、過去の闇によって覆い尽くされ、何も見えなくとも確かにそこにある。だからこそ苦しいのではないかと。もし、そのカケラをひとつでも引っ張りだすことが出来るなら、そのたったひとつのカケラを、大きく膨らませることが出来るなら、大きく膨らんだカケラが、次のカケラを引っ張り出してくれるのではないかと思います。 その小さなカケラのようなプロセスを知る事は、楽しかった事のプロセスを知ることでもあります。本当に楽しかったということは、それを共有する相手がいたということではないでしょうか？ そして、共有した相手の暖かい眼差しがあったからではないでしょうか。そして、それは一瞬であろうとなかろうと、愛を注ぎ、愛を受けた証なのではないかと思います。その一瞬の受けた愛情を確かめられたら、一瞬でも繋がった心を感じられたら、辛い過去を、真っ白になった記憶を、這いずり回らせた理由がわかるかもしれません。
愛情を求めてさまよう人たちは、その一瞬の小さな愛情を心の奥深くに沈め、辛い過去ばかりにとらわれ、その小さな光に目を向ける事すらできないでいます。人は愛されていたのだという確証が少しでもあれば、いや、たったひとつだろうと、愛されていた確証を得る必要があるのです。その偽りのない愛情を感じることが出来れば、これまで長い道のりの中で、たくさんの人たちから受けてきた愛情を再確認できる。失望を絶望に変えられなかった理由が、そこにあるのかもしれません。
人間は酷いことをする、人間は裏切る、人間は嘘をつく、確かにその通りかもしれません。しかし、触れ合った時の暖かさや愛情を感じたからこそ、一瞬でも暖かさや愛情が本物だと感じたからこそ、あきらめず生きていける。不信に身をおき、不信に打ち砕かれ、不信を選択するのも自分自身。何度も不信に打ち砕かれようとも、光を見つめることを選択するのも自分自身。もし、心地よく生きることを本当に望むなら、そこは必ず気づかなければならない分岐点なのではないでしょうか。
人の不遇を比べることなどできるはずもありません。しかし、不遇な環境に育ってきた人にも、回復出来た人がいるはずなのです。私はそう確信しています。私が子どもの頃の回想にこだわるのは、その小さなカケラの輝きに、限りない可能性を感じてしまったからかもしれません。
もくじ
- まえがき
- 絶対という言葉を使うとき
- 心を取り戻す【喪失】
- 喪失の大きさがもたらす弊害
- 違和感
- 言い訳
- 喪失の弊害に至るまで【過干渉・過保護】
- 先読みの不安・意に沿う不安
- 過干渉でやってはならないこと
- 逃げ場のない現代の子どもたちの家庭
- 否定される感覚
- 怒りとは
- 呪縛【心の法律を壊す】
- 心痛める人たちの心の呪縛
- 【記憶の操作】普通の人たち
- 一人の人間の二つの気持ちが殺しあう
- 心に痛みを持つ人の最大の壁
- 回復するために【痛みとともに得るもの】
詳細
| 書名 | 壊れた心を取り戻す |
|---|---|
| サブタイトル | 現代の子どもたちの壊れる仕組み |
| 著者 | きんたろう |
| 出版年月 | 2008年8月 |
| 価格 | オンデマンド本：2,480円+税 電子書籍：800円+税 |
| サイズ | Ａ５版 |
| ページ数 | 164ページ |
